「それで、サッカー部のマネージャーになったのか?」

「うん……」

「マジかよ、狼の群れに自分から飛び込むなんて、どうかしてる」

「狼だなんて。スポーツ少年はそんなに野蛮じゃないよ。みんなスポーツで爽やかな汗をかいてるんだから」

「爽やかな汗だって? 運動部の部室なんて、汗と男臭さでモワッとしてるだけだ」

「そうかな。みんな優しいし、友達もいるしなんとかなるよ」

 私は創ちゃんの言葉を聞き流す。サッカーに興味はなかったけれど、ボールを追ってピッチを走る姿はみんなカッコいい。

 スポーツ選手はみんなキラキラ輝いてる。
 これぞ、青春! みたいな。

「百合野も一緒だし、心配いらないからね」

「心配だらけだよ。礼奈、本当にわかってる?」

「わかってるよ。だからヤキモチは妬かないでね」

 創ちゃんの頬にチュッとキスをしたら、創ちゃんの機嫌がなおった。

 ◇◇

 翌日、六限目の授業を終えた私は、部活に向かう準備をする。隣に座っていた桐生君に突然腕を掴まれた。

「マネージャー希望なら、バスケ部のマネージャーになれば良かったのに。まだ間に合うよ。サッカー部断れば?」

「桐生君……」

「よりによって、山梨先輩のいるサッカー部だなんて最悪だよ。クラスメイトなんだから俺に相談して欲しかったな」

「どうして最悪なの?」

「だって山梨先輩は、今でも南のことが好きみたいだし」

「うわ、わ、そんなことないよ。勘違いしないで。私は百合野に頼まれたから、サッカー部のマネージャーに……」

「南は気付いてないのか? 山梨先輩も一橋先輩も、入学式の日にわざわざ南に会いに来ただろ。あれは『まだ好きだよ』っていうアピールなんだから」

「やだ、桐生君。どうしてそんなことがわかるの?」

「だって、俺も南のことがまだ好きだから。もし二年になって南とクラスが変わったら、きっと同じことするしね」

 マジ……ですか?

「礼奈、何話してるの? 部活に行くよ。ジャージ持って来たよね?」

「うん」

 私は百合野に手を掴まれ教室を出る。
 桐生君が変なことを言うから、山梨先輩のことをまともに見れないよ。