「えー……見学?」

 逃げ腰の私は、百合野に腕を捕まれサッカー部が練習しているグラウンドに強制連行された。

 百合野はサッカー部の顧問に挨拶をし、三年生のマネージャーに近付き、入部希望を告げる。

「マネージャー希望なの? わぁー嬉しい! マネージャーって体力勝負だし、結構キツいから、最近の女子は嫌がるのよ。もうすぐ引退だし、希望者がいなくて困ってたの。大歓迎だよ」

 百合野は満面の笑みで、私にVサインする。 私は単なる付き添いのつもりだった。

「南、もしかして入部希望? サッカー部のマネージャーになってくれるのか?」

 私に声をかけてきたのは、ブルーのユニフォームに身を包んだ山梨先輩だった。

「私は違います。友達の付き添いだから」

「南は付き添いなの?」

 私達の会話に、百合野が乱入する。

「違います、違います。礼奈も私もマネージャー希望です。山梨先輩、入部させて下さい!」

 百合野は本気でマネージャーになりたいんだね。その熱意に圧倒されて、ついコクンと頷いてしまった。

 サッカーのルールも知らない私。運動音痴の私にサッカー部のマネージャーが務まるわけがない。

 それなのに山梨先輩は部員を集めて、まだ仮入部の私達を新マネージャーだと紹介した。

「二人とも中学の時の後輩なんだ。南さんと山本さん、みんな宜しく頼むな。仲良くしてやってくれ」

 『宜しく頼むな』って……。
 
 もう断ることができないよ。