バンッと大きな音がし、ズキンと後頭部に痛みが走る。

「いてぇ……な」

「この獣《けだもの》! 俺の家で盛るな!」

「敏樹こそ、無断で礼奈の部屋に入るな」

「ハア? 俺は家族だからいいんだよ。お前こそ、礼奈の部屋に勝手に入るな!」

「ちぇっ」

 俺は敏樹に殴られた頭を右手で撫でる。礼奈はほんのり赤くなった首筋を髪の毛で隠した。

「それで、桐生となんだって? 礼奈、創と別れるのか? まあ、別に止めはしないけどな」

 親友なんだから、止めろよな。

「俺達は別れません」

「別れを切り出されて逆上した創が、礼奈を無理矢理襲ってたんじゃねーのか?」

「俺が無理矢理? アホか。俺達は相思相愛、ラブラブなんだよ。だが、お前と違って理性があるから、暴走しないよ」

 ていうか、暴走する寸前だった。

「お兄ちゃん、私達の邪魔をしないで」

「じゃ、邪魔!?」

 フガフガと鼻を鳴らし、敏樹が俺達を睨む。 礼奈は俺にギュッと抱き着いた。

「ふん! バカップルめ。勝手にしろ!」

 敏樹が部屋を出たあと、礼奈が俺を見上げニマッと笑った。

 俺は礼奈の額に、チュッとキスを落とす。

「礼奈、桐生とは友達なんだよな」

「そうだよ」

 可愛いお姫様をギュッと抱き締め、俺はもう一度額にキスを落とす。

「他の男に笑顔を振りまくな」

「創ちゃんこそ、女子大生に見とれないでね」

「そんなことしてないだろう」

「本当かなぁ?」

 仔猫みたいに俺にじゃれつく礼奈。
 俺は猫じゃらしか。