「もしもし、桐生君どうしたの?」

 俺がいるのに、さっさと電話に出た礼奈。

 俺は礼奈に背後から抱き着いたまま、携帯電話に耳を当て盗み聞きをする。

『南の声が聞きたくなったんだ。今、何してるの?』

「がうぅ……」

「な、何って……」

『犬の声がするね。南んち犬飼ってんだ。怒ってるのかな? 凄く唸ってるね』

「がうぅー」

「うふふ、気にしないで。時々狼になっちゃうけど、危害を加えたりしないから」

『犬が狼に? 南んちの犬、狂暴なんだね。明日さ、学校が終わったら原宿に行かない? ショップに可愛いアクセサリーが沢山入荷したんだ。新作なんだよ。見においでよ』

「わぁ、いいな」

 礼奈は歓声を上げ、俺を見上げる。俺は礼奈の首筋にチュッてキスをする。

「……きゃあっ、ご、ごめん桐生君。明日行けない。もう電話切るね」

『南? どうしたの?』

「犬が暴走したの。バイバイ」

『み、南?』

 礼奈は電話を切ると、プーッと不満げに頬を膨らませ口を尖らせた。そんな顔したら、唇にキスしたくなるだろ。

「電話してるのに、創ちゃん狡いよ。首が赤くなってる。急にキスするなんて反則だよ」

「彼氏の前で、デートの約束するからだろう」

「……っ、やだ。アレはデートじゃないし。電話を盗み聞きするなんて酷い」

「がうぅー。俺だって狼になるんだからな」

 俺は礼奈の首筋にチュッチュッと何度もキスを繰り返す。

「やだ、くすぐったいよぅ……。きゃはは。本当に犬みたい」

 礼奈の首筋を舐めるようにキスしまくる俺は、嫉妬に狂った狼だ。