――フローラ大学附属高校、入学式。

 父兄に混ざり、創ちゃんとお兄ちゃんの姿。

 渡り廊下で待機していた私は、背筋をピンと伸ばし会場である講堂に入場する。私は一年A組、同じ公立中学出身の友人、山本百合野《やまもとゆりの》と同じクラスになった。

 そしてもう一人……。
 桐生薫《きりゅうかおる》。桐生君は一年生の中でもダントツのイケメンだ。

「南、宜しくね」

「こちらこそ、宜しくね」

「家族みんなで入学式に来てるんだね。俺は両親とも仕事で欠席だよ。南んちは家族の仲がいいんだね。しかも……彼氏まで……」

「あはっ」

 確かに家族全員参加プラス創ちゃんだなんて、嬉しいような恥ずかしいような……。

「ちょっと妬けるな」

「……えっ?」

「大学生の彼氏、南のことがよほど心配なんだね。可愛いし気持ちはわかるけど」

「桐生君……」

「俺も南のことが好きだよ。片想いだけどね」

 桐生君が耳元で囁いた。
 私は入学式だというのに、思わず叫び声を上げそうになった。

 カーッと頭に血が昇り、きっと真っ赤な顔をしてる。『片想い』だなんて、ドキドキするようなことを耳元で言わないで欲しい。

 チラッと父兄席に視線を向けると、創ちゃんと目が合った。何事もなかったかのように、「エヘッ」と笑ってみたが、創ちゃんはムッとしている。