「もしも学校でまた告られても無視しろよな」

「わかってるよ。礼奈は創ちゃんの彼女だもん。創ちゃんみたいに他の男子に目移りしない」

「こらっ、創ちゃんみたいってなんだよ。俺がいつ他の女子に目移りしたんだよ。俺はいつだって礼奈のことだけを考えてるんだから」

「歩道を歩いてても綺麗な人や、セクシーな人がいたら振り返るくせに。有名人のポスターやグラドルのポスターも好きだよね。巨乳が好きなの?」

 ぶはっ……。
 そこまで言うか。

「それは目移りじゃなくて、男の性《さが》だ。男子には生まれながらに組み込まれたDNAがあるんだ。だから、それは男子の本能で仕方がないんだよ。礼奈だってさっき告白されて嬉しそうだったし」

「創ちゃん、もしかして妬いてるの?」

「や、や、妬いてませんっ!」

 本当は嫉妬に狂って、丸焦げだ。

「礼奈が高校に合格したら、ご褒美が欲しい。リング買ってね」

「さっきのか?」

「違う。創ちゃんとお揃いのリングが欲しい」

「俺とお揃い?」

「創ちゃんと繋がってる気がするから」

 俺と……
 繋がってる……?

 お揃いって、マリッジリング!?
 まさかの逆プロポーズ!?

「俺達の気持ちは、いつだって繋がってるよ。わかった、約束する。合格したら右手の薬指は俺がいただく」

「うふっ」

 俺は礼奈の左手を取り、薬指にチュッとキスをした。

「これでリセット。左手の薬指も俺のものだからな。誰にも触らせるな。文化祭のフォークダンスも禁止だからな」

「うふふっ」

 可愛い礼奈。
 高校生になったら、俺にもサイコーのご褒美下さい。

 ◇◇◇

 ――翌年二月、礼奈の受験も本番を迎えた。

「コン、コン、コン……」

「礼奈、熱があるんじゃない?」

 ベッドに横わたる礼奈。
 体温計をはかると、三十八度五分だった。

「インフルエンザみたい。創ちゃんに移っちゃうよ」

「俺はいいけど、受験本番だっていうのにインフルエンザだなんて、今まで頑張った努力が発揮出来ないよ」

「コン、コン……大丈夫。礼奈頑張る。だって創ちゃんからご褒美を貰うんだから。コン、コン……」

「本当に大丈夫か? 俺が女装して代わりに受験しようか?」

「創ちゃんたら。ありがとう。保健室受験するから大丈夫だよ。集中できるし、その方がいい」

「これ俺が愛用してるシャーペン。これを俺だと思って頑張れ。試験中も、ずっと礼奈の傍にいるからな」

「うん」

 礼奈は最悪のコンディションで、フローラ大学附属高校の受験に挑んだ。