つい誘惑に負けて、ワンピースの肩紐のリボンを解いてしまった。

　俺の手はもう制御不能です。

　礼奈の髪に触れると、礼奈の体がビクンと跳ねた。

『創、なにやってんだよ。礼奈が怯えてるだろう』理性君に窘められ、俺は我に返る。

　俺……何、やってんだよ。

「……ごめん、礼奈。肩紐がほどけかかっていたんだ。すぐに結び直す」

　上体を起こしワンピースの肩紐を、両手で結び直した。

「……創ちゃん」

「なに？」

　澄んだ瞳で礼奈が俺を見つめる。そんな色っぽい眼差しで見ないでくれ。

　欲望君が増殖してしまう。

『チャンスだろ。いけー』って、さっきから煩くてたまらない。

「……私って、女子の魅力ないのかな？」

「……えっ？」

「私は美貴さんや妃乃さんみたいに、女らしくない？」

　いやいや、十分色っぽいってば。

　俺は頑張って踏み留まっているのに、礼奈は俺に抱き着き、俺の胸に顔を埋めた。

「……創ちゃんのイジワル」

　そして、甘い言葉で俺の理性を狂わす。

　どっちがイジワルだよ。

「そんなことを言ったら、襲っちゃうよ」

「……イジ……ワル」

　礼奈の額にキスを落とす。

「今日はずーっとこうして、礼奈を抱きしめて眠る。俺達の初めての夜だから」

「……うん」

「ちょっと……暑いけど。我慢できる？」

「……うん」

　俺は礼奈を抱き締めた。礼奈の心臓の音が俺と同じリズムを刻んでいる。

　なんか……。
　幸せだなぁ。

　サンルーフから見える星が、俺達を祝福してくれているようだ。