夕方まで海で泳ぎ、バーベキューの後は定番の花火。

 浜で打ち上げた花火は、赤や黄色の綺麗な色を放ち、ダイナミックな大輪の花を夜空に咲かせ散っていく。

 恋人達には、ムード満点のシチュエーションだ。

「創ちゃん、綺麗だね」

「……だな」

 振り返ると、敏樹と美貴ちゃん、良と妃乃ちゃんはもうチューしてるし。

 マ、マ、マジですかっ!

 中学生同伴のキャンプで、堂々とチューはマズいだろう。

 でも、それがOKだとしたら、俺達もしていいって、ことだよな?

 俺と礼奈は思わず顔を見合わせる。言葉が途切れ、瞼を閉じた礼奈。

 こ、これはもういくしかない。
 
 敏樹との約束なんて、花火と一緒に木っ端微塵に吹き飛んだ。

 礼奈の唇に、俺の唇が触れる……寸前!

「創ーー!待て」

 出たっ!夏の夜に、鬼の怒鳴り声。

 俺は慌てて、礼奈から離れる。

 『待て』って何だよ。
 俺はお前の犬か。

 一体、いつになったら『ヨシ』って、GOサインを出してくれるんだよ。

「創、わかってんだろうな」

 はいはい、何もいたしません。
 
 自分達だけ夏をエンジョイすればいいだろう。

 波の音と風の音が超ロマンチックなメロディを奏でているのに。

 美しい花火が、スポットライトみたいに俺達を照らしているのに。

 なのに……なのに……。
 キスもおあづけかよ。

 テントは二つしかないのに、一つのテントに良と妃乃ちゃんがさっさと入った。

 おいおい、薄っぺらいテント。妃乃ちゃんとイチャイチャしてる様子が外に、ダダ漏れですけど。

「わりぃ、もう一つは俺達が使うから」

「はあー!? 意味わかんねーよ」

 俺と礼奈は砂浜でまさかの野宿ですか?
 中学生がいるのに、カップルがテントでイチャイチャするなんて、教育上良くないだろ。

「はい、これ車の鍵ね。後部座席を倒したら二人で寝れるからね」

 ふ、二人で寝れる!?

 ご親切な美貴ちゃん、俺を悶え死にさせる気か?

 大好きな礼奈に手も足も出せないのに、車中で二人きりで一夜を過ごせと?