「でもさ、敏樹の妹だから、敏樹にそっくりなのかなと思ってたけど、全然似てないな。超可愛い。礼奈ちゃんって誰に似たの? 突然変異?」

 礼奈は少し困ったように、上目遣いで俺を見上げた。

「私はパパ似で、お兄ちゃんはママ似なの」

「ゲッ、敏樹、まさかのお袋さん似なのか? 嘘だろ! それ悲惨じゃね? 敏樹のお袋さん、こんな顔なの? 親父さん、よく結婚したな」

「良! てめぇぶん殴るぞ。俺の両親は大恋愛の末に結婚したんだ」

「あはは、冗談だよ。美人は三日で飽きるが、ブスは三日で慣れるっていうからな」

 ていうか、フォローになってないし。
 
 敏樹はおばさんにそっくりだから。
 敏樹にセミロングのカツラを被せたら、おばさんと見分けつかないよ。

 目が小さくて鼻は低くて、顔は満月のお月様みたいに真ん丸。

 笑っちゃいけないけど、マジで笑える。

「みんな、敏樹の悪口はやめてよね。敏樹は犬のチャウチャウに似てて可愛いでしょう。喧嘩も強いし、全部サイコーなんだから」

 ぜ、全部?
 全部って、全部?

 美貴ちゃんは、ある意味マニアだな?

「チャウチャウ!? ギャハハハ、全部サイコーって、ギャハハ。敏樹のどこがサイコーなんだ?」

 良は腹を抱えて大爆笑!
 どうやら東京湾の魚の餌になりたいようだ。

 敏樹が怒りで顔をプルプルさせ、チャウチャウみたいに吠えた。

 美貴ちゃんはハンドルを握ったまま、その姿を横目でチラッと見て、「かわいい」って呟いた。