「家族が戻ってくるかもしれないから、礼奈の部屋に上がっていい?」

「……うん」

 礼奈の許可を得て二階に上がり、俺達は礼奈の部屋に入る。何度も遊びに来たことがある部屋。でもいつも敏樹の監視つきで、家の中で二人きりになることはなかった。

 部屋に入ると、礼奈が泣きながら俺に聞いた。

「創ちゃんは……あの人が好きだったんでしょう。綺麗な人がいいんでしょう」

 何を言ってんだ。
 俺は礼奈が好きなんだよ。

「どうしてそんなことを聞くんだよ?」

 俺は礼奈の涙を指で拭った。

「礼奈は中学生だから、一緒にいてもつまらないでしょう」

 礼奈は潤んだ瞳を真っ直ぐ俺に向けた。

 中学生だけど、潤んだ瞳は十分色っぽいよ。
 俺、こんなにドキドキしてるんだから。

「そんなことないよ。俺は、礼奈が好きなんだよ。中学生の礼奈が好きなんだ」

「創ちゃん、ロリコンなの?」

「は? どうしてそうなるんだよ。ロリコンじゃなくて、一人の女の子として、礼奈のことが好きなんだよ」

「ほんと?」

 あー……。
 そんな悩ましい目で、俺を見ないでくれ。

 ヤバいほど、ドキドキしてきただろ。

「創ちゃん……。礼奈も好きだよ」

 礼奈が俺の胸に顔を埋めた。

 ぐあああぁ……。
 礼奈をムギューッて、抱きしめたい。

 俺の両手は礼奈を抱き締めたくて、パタパタと上下している。でも、ここで抱き締めたらアウトだ。俺の暴走が止まらなくなる。

『キスくらいしてもいいんじゃね?』
 欲望が脳内で俺を唆す。

『ほら、ボコられたあとの消毒。あれってキスみたいなもんだろ?』
 いやいや、あれはキスじゃない。あれは口角の横を掠めただけだし、あくまでも傷の消毒だ。

『今日は、敏樹いねぇし。殴られる心配ねぇし。ここでしないで、いつやるんだよ』
 うっさい、うっさい、ムラムラした欲望は黙ってろ。

『そうだよ、創。礼奈が本当に好きなら大切にしないとな』
 理性の登場に、俺は脳内の欲望を蹴散らす。

「……礼奈」

 俺は礼奈の額にそっとキスを落とし、額と額をくっつけて、にっこり微笑んだ。