【創side】

「礼奈、次の英文を訳して」

「創ちゃん、まだ勉強するの?」

「夏休みだけ家庭教師するって、礼奈のお母さんと約束したからな」

「受験終わったのに勉強ばかりして、楽しくないよぅ」

 礼奈は甘えたような声を出し、プウッーと頬を膨らませた。

「風船みたいにほっぺを膨らませない。パチンって破裂するぞ」

 礼奈は頬を膨らませまま俺に顔を近付けた。 チュッて頬にキスをすると、空気が抜けた風船みたいに、「ふにゃあ」って笑う。

「ほらね、破裂した。はい、次の英文を訳して」

 礼奈は再び頬を膨らませる。まるで小さな子供だ。チュッて頬にキスをすると、「ふにゃあ」って笑う。

「礼奈、何度も同じことをしない。子供じゃないんだから。キスして欲しくてやってるのか?」

「子供? 創ちゃんの赤ちゃんって、どんな顔なのかな?」

「俺の赤ちゃん? 俺達の子供ってことか? あはは、考えたこともないよ」

「全然?」

「うん、全然」

「ふーん、男の人って何も考えずにキスするの?」

「ゲホゲホ、話を摩り替えない。キ、キスと赤ちゃんの顔は関係ないだろう。大体俺達はまだキスしてないし」

「礼奈は色々想像するよ。もしも創ちゃんの赤ちゃんなら、世界一可愛いよね」

「俺の赤ちゃん……」

 礼奈、色々想像するのか?
 まさか、あんなこともこんなことも?
 ていうか、キスで赤ちゃんはできないよ。

 それ以上のことを妄想するなんて、俺にはムリだ。それだけで犯罪を犯した気になる。

 礼奈のことが大好きで。
 礼奈のことが可愛くて。
 礼奈のことを大切にしたくて。
 ずっとずっと一緒にいたくて。

 そんなことは、考えないようにしてきた。
 そんなことをしたら、俺達の理性がぶっ壊れてしまいそうだから。