「……そうだよな。これ以上動くのは体力も消耗して危険だな」

「創ちゃんと二人きり。嬉しいな」

「俺達、遭難したんだよ。礼奈は暢気だな」

「だって、お兄ちゃん達と一緒にいたら、二人きりになれないもん」

「確かに。絶対俺達のテントに侵入するに決まってる。今頃は我が物顔で占領してるかも」

「だよね」

 礼奈は俺にギュッて抱き着いた。

「海でキャンプした時に、創ちゃんに腕枕してもらって、一晩中ドキドキして眠れなかった」

「えっ?」

「創ちゃんと初めてのお泊りだったから」

「海のキャンプか。懐かしいな。俺もメチャメチャドキドキして眠れなかった」

「創ちゃんも? 礼奈だけだと思ってた。創ちゃん、礼奈はもう高校生になったんだよ」

「知ってるよ」

「高校生になったのに、創ちゃんはずっと礼奈のことを子供扱いしてる」

「礼奈……」

「ずっと待ってたんだよ。創ちゃんが礼奈を大人として見てくれるのを……」

「礼奈?」

「いつまで経っても中学生の時とちっとも変わらないから、ちょっと寂しかったの。でも……創ちゃんがドキドキして眠れなかったって言ってくれたから、それだけで嬉しい」

 礼奈は躊躇することなく、床に寝転がる。

「創ちゃん、見て。寝転んで見ると違う景色みたい。あの夜と同じ星空だね」