プールで長時間過ごし、外に出るとすでに薄暗くなっていた。

 テントに戻ると、敏樹が声を荒げた。

「炭がねえ! ここに置いてたのに、誰かにパクられた!」

「まさか? 敏樹の勘違いだよ。よく捜してみろよ」

「ちゃんとここに置いたんだよ。売店は午後五時までだし、もう閉まってるし、どうすんだよ」

「テントの中に収めておかないからだよ。敏樹、どうすんだよ」

「創、そこの林で木の枝を拾ってこい」

「はあ? もう薄暗いのに?」

「バーベキューコンロに残った炭で、下ごしらえしてっから。すぐに拾ってこいよ。カレーなのに火が消えたら煮込めねぇだろ。早く行け」

 相変わらず敏樹は鬼だ。
 今から木の枝を拾うなんて、薄暗くて地面もろくに見えないし、獣や毒蛇が出たらどうするんだよ。

「創ちゃん、礼奈も行く」

 懐中電灯を片手に握り締め、礼奈は行く気満々だ。肝試しじゃないんだからな。

「礼奈、幽霊に気をつけろよ」

「はあ? 幽霊? アホか、キャンプ場に幽霊なんて出ないよ」

「わかんねぇじゃん。林の中に魔物が棲んでるかもよ。それとも野生の熊」

「よ、よせ、俺はそういうの苦手なんだよ」

 俺の隣にいた礼奈が、懐中電灯で自分の顔を下から照らした。

 暗闇に浮かび上がる不気味な顔……。

「ひゃあああー……!」

「きゃはは、創ちゃん怖がりだね」

 礼奈のやつ。
 こういうところは、敏樹そっくりなんだから。

「肝試しみたいだね。創ちゃん行こう行こう」

「危ないから、俺から離れるなよ」

「はーい」

 礼奈に手を引かれ、俺は渋々林に向かった。

 まだオープンしたばかりのキャンプ場。
 キャンプ場から数メール離れただけで、辺りは人気がなくなり急に寂しくなる。

 懐中電灯で照らされる灯りだけを頼りに、林の中に入る。

 ガサガサと葉が揺れる度に、俺は悲鳴を上げそうになった。礼奈はその度に、懐中電灯で自分の顔を照らした。

「ぎゃああー……、だからぁヤメロッてば。悪趣味だな」

「だって創ちゃんが面白いんだもん」