「深い関係だなんて。俺達は今でもピュアな関係だから」

「うわわ、またまたぁ。敏樹の前だから、無理しちゃって。まあ、そういうことにしてあげるわ」

 だって本当のことだから。

 礼奈がめでたく高校生になったのに、『待て』と命令された犬みたいに、俺は未だに動けない。

 高校生になった途端、盛りが付いた狂犬みたいに礼奈を襲うわけにもいかず、じっと堪え忍んでいる。

 だけど……。
 流石にもう限界だよ。

 俺は男だ。
 しかも二十歳過ぎた男だ。
 これ以上断食《だんじき》すると、カラカラに干からびて死んでしまう。

「礼奈ちゃん、高校生活満喫してる? フローラ大学附属高校ってイケメン揃いだし。礼奈ちゃんは可愛し、逆ハーレム状態でしょう」

 逆ハーレム状態って、確かにその通りだ。
 退治しても、次から次へと狼が群がる。

「創ちゃんよりも素敵な男子がいるんじゃない?」

「妃乃、礼奈を煽るな」

「創ちゃんより素敵な男子なんていないよ。創ちゃんは世界一だもん。ねっ」

「なっ」

 俺は礼奈と顔を見合せ、ニカッと笑う。

「は? 相変わらずバカップルだね」

「だろ、コイツら本当にバカップルなんだよ。見てて超うぜぇ」

 敏樹はハンドルを握ったまま、「チッ」と舌打ちをし毒舌を吐いた。ルームミラー越しに俺達を睨み付けている。

「お前は前向いて運転しろよな。危ないんだから」

「ふん、俺は前にも後ろにも目玉があるんだよ」

 お前は化け物か。

 ◇

 ―オートキャンプ場―

 オープンしたばかりのオートキャンプ場は、屋内プールやアスレチック等、施設も充実していて大人も子供も楽しめる。

 俺達は車からテントを取り出して組み立てていく。

「きゃは、私達のおうち!」

「くはっ、俺達のおうち」

 俺達のテントは敏樹や良介のテントより、一回りデカい。四~五人用の豪邸だ。これならゆったりとテントの中で寛げる。

「生意気にバカデカいテントを買いやがって。創、俺のテントと交換してやるよ」

「アホか。断る」

 敏樹と良介のテントは二~三人用のコンパクトなもので、使い古したものだ。

「これだけ広いなら、詰めれば五~六人いけるんじゃね? 他のテント組まずに、みんなで雑魚寝する?」

「アホ、アホ、アホ。敏樹のドアホ」