「南、今日はありがとう。また文化祭の時に、デッサン頼むよ」
「はい、あの……一橋先輩」
礼奈は学生鞄からブルーの封筒を取り出し、両手で差し出した。
「これ……お返しします。ごめんなさい」
「うん。南、さようなら。また明日な」
「はい。家まで送って下さりありがとうございました。一橋先輩、さようなら」
狼は封筒を受け取り、ブレザーのポケットに収め、再び俺に頭を下げた。
礼奈の手を握った憎き相手なのに、去り際も優等生だ。冷静さを欠き、高校生を殴ってしまった自分がバカみたいだ。
もしも彼が警察に通報したら、俺は傷害事件で逮捕されかねない。
「創ちゃん、足……」
「足?」
足下に視線を落とすと、右足は自分の白いスニーカーで、左足は敏樹の黒いスニーカーだった。
「急いでたから足下を見る余裕なんてなかった」
「暴力反対。あれじゃお兄ちゃんと一緒だよ」
俺が乱暴者の敏樹と一緒?
「殴りかかったことは謝る。でも、あいつも殴ったし。しかも倍返しだったし」
「それは創ちゃんがいきなり殴るからだよ。まさか一橋先輩も殴り返すなんて驚いたけど……。創ちゃん、一橋先輩と手を繋いでごめんね。最後だって言われたら、なんか……断れなくて。礼奈が一番悪いの」
「礼奈は優しすぎるから。ほら」
俺は礼奈に手を差し出す。礼奈はにっこり笑うと俺の手を握った。
「やっぱり、創ちゃんの手が一番あったかい」
「そっか?」
「うん」
「はい、あの……一橋先輩」
礼奈は学生鞄からブルーの封筒を取り出し、両手で差し出した。
「これ……お返しします。ごめんなさい」
「うん。南、さようなら。また明日な」
「はい。家まで送って下さりありがとうございました。一橋先輩、さようなら」
狼は封筒を受け取り、ブレザーのポケットに収め、再び俺に頭を下げた。
礼奈の手を握った憎き相手なのに、去り際も優等生だ。冷静さを欠き、高校生を殴ってしまった自分がバカみたいだ。
もしも彼が警察に通報したら、俺は傷害事件で逮捕されかねない。
「創ちゃん、足……」
「足?」
足下に視線を落とすと、右足は自分の白いスニーカーで、左足は敏樹の黒いスニーカーだった。
「急いでたから足下を見る余裕なんてなかった」
「暴力反対。あれじゃお兄ちゃんと一緒だよ」
俺が乱暴者の敏樹と一緒?
「殴りかかったことは謝る。でも、あいつも殴ったし。しかも倍返しだったし」
「それは創ちゃんがいきなり殴るからだよ。まさか一橋先輩も殴り返すなんて驚いたけど……。創ちゃん、一橋先輩と手を繋いでごめんね。最後だって言われたら、なんか……断れなくて。礼奈が一番悪いの」
「礼奈は優しすぎるから。ほら」
俺は礼奈に手を差し出す。礼奈はにっこり笑うと俺の手を握った。
「やっぱり、創ちゃんの手が一番あったかい」
「そっか?」
「うん」