【礼奈side】

【南、今日はごめん。でも誤解しないで。疚しい気持ちなんてなかったんだ。南が欲しがっていたリングをプレゼントしたかっただけなんだ。怖がらせて本当にごめん。】

 桐生君……。
 私、本当に怖かったんだよ。

【桐生君の気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい。】

 メールを送信してすぐにピコッてLINEが入る。

【礼奈、大好きだよ。】

 きゃう、創ちゃんだ。

【南のこと、好きなんだ。】

 あうっ、桐生君だ。

 困ったな……。
 どうすれば桐生君にわかってもらえるんだろう。

 桐生君、ごめんなさい。
 こればかりはどうにもならない。私が好きなのは、創ちゃんだから。

 ◇

 翌朝、生徒会のポスター作りのため、いつもより早く家を出た。

「あれ、南じゃん」

「花沢君、おはよう。卒業以来だね。元気だった?」

「おう。お前フローラ大学附属高校なんだな。制服チョー似合ってる」

「花沢君は学ランなんだね」

「俺、緑工業高校なんだ。だから、学ラン」

 花沢君はマンガに登場するヤンキーみたいに、制服を着崩している。

「そういえば、花沢君って桐生君と友達なんだよね」

「桐生? 俺が桐生とダチ? そんなわけねぇだろ。アイツとは殆ど口も聞いたことねぇし」

「花沢君ちで卒業パーティーしなかった?」

「卒業パーティー? するわけねぇだろ。くだらねぇ」

 花沢君の家で卒業パーティーをしていない?

 桐生君は以前家に訪ねて来た時、花沢君ちで卒業パーティーをしたって言った。

 あれは嘘……?
 何のためにあんな噓を?

「南、じゃーな」

「うん、バイバイ」

 花沢君と別れ、私は家に引き返した。机の引き出しからブルーの封筒を取り出す。

 もしかしたら、この手紙の差出人は桐生君?

 私がこの手紙を受け取ったから、いけないんだ。

 これが桐生君のものなら、桐生君に返さないと。

 手紙を学生鞄に突っ込み、私は家を飛び出した。