――翌日、放課後。
 生徒会室に行く準備をしていたら、一年A組の教室に鈴木先輩が訪ねて来た。

「す、鈴木先輩!?」

「山本さん、南さん、ちょっとグラウンドに来てくれない?」

「えっ……? あっ、はい」

 私と百合野は顔を見合せた。
 百合野は眉をしかめ「……やだな」と小さな声で呟く。

「制服のままでいいから。ちょっと来て欲しいの」

 ……なんだろう。
 昨日のことで、怒られるのかな?
 もしかして、公開処刑的な……。

 内心ビクビクしながら、鈴木先輩の後ろを着いて行く。

「南さん、次の部活はもう決めたの?」

「……私、昨日からボランティアで生徒会の仕事を手伝ってて……」

「生徒会の仕事?」

「体育祭のポスター作りです。中学校の時に美術部だったので」

「そう、山本さんは?」

「私は別に……。他の運動部のマネージャー募集を探してるけど、今募集してなくて……」

「そう、残念だったわね」

 鈴木先輩は私達の前を歩き、振り向きもしない。百合野は鈴木先輩の後ろで「イーッ」と歯を剥いている。その変顔、まるでお猿さんみたい。

 私は神妙な面持ちで、鈴木先輩の後ろを歩いた。

 グラウンドに行くと、部員はストレッチをしていた。顧問の先生は腕組みをしながら、部員に激を飛ばす。

 もうすぐ大会だから。
 みんな必死だよね。

 山梨先輩は私を見つけると直ぐさま目を逸らし、やる気なさそうにダラダラとストレッチをしていた。

 その様子を見ていた鈴木先輩は、顧問の先生より先に怒鳴り声を上げた。

「山梨颯! 何をダラダラしてんの! 本気出しなさいよ!」

「はっ?」

 鈴木先輩に叱咤され、他の部員は目を丸くして動きを止めた。

「女子に振られたくらいで、一体なんなのよ! あんたにとって、サッカーってそんなショボいもんだったの!」

「ショボい? 鈴木、お前何言ってんだよ」

「私はサッカーしてる颯が大好きだった。だから、サッカー部のマネージャーになった。それなのに失恋したくらいで、女みたいにメソメソしちゃってさ。そんな颯みたくないよ! ガッカリさせないでよ! プロになりたいって夢、そんなことで潰さないでよ!」

「鈴木先輩……」

 鈴木先輩はみんなの前で、堂々と自分の気持ちを告白した。