そう思い、歩調が緩んだ時。


歩道の前方から犬がかけよってくるのが見えた。


「きゃっ」


咄嗟に身をかわそうとして、そのまま尻もちをついてしまった。


歩道のアスファルトの熱と、迫ってくる野良犬に思考が停止してしまう。


牙をむき出しにしてよだれを垂らしている犬が、大きな声で吠えた。


「ダ、ダメ!!」


あたしはそう叫び、肩の上にいた美影と白堵を手の中に抱き抱えた。


『下手をしたら食べられてしまう』という、菜戯の言葉がよみがえる。


「食べちゃ、ダメ!!」