それを受け取ったオレは思わずつぶやいた。

「彼女に良く似合いそうだ」

…本当にそう思った、ストレートの長い髪。

ほんのり染められたあの髪に、よく似合いそうだと思った。


「・・・彼女に、ですか?」

・・・彼女、その言葉に、多田さんが目ざとく反応する。

オレは焦る気持ちを何とか静め、冷静に言い直した。


「姪っ子の事だよ」

「そうですよね…これで、いいですか?」

「もちろん、ありがとう。助かったよ」


…自分で決めた物ではないのが残念だが、もしまた、こんな事があった時は、

必ず自分で決めようと、心に決め、それを受け取る事にした。


「途中の写真だけ撮らせてもらいますね」

「あ~、はいはい、どうぞ」

多田さんは、現場の中に入り、写真を撮り始めた。


オレも作業に戻ろうと、顔を上げた瞬間、

あの時の、彼女が目に入った。

…次、いつ会えるのかなんてわからない。

オレは、髪留めの入った袋を握りしめ、彼女を追いかけた。