ベッドの端に座れば近くの棚に置いてある煙草とライターに手を伸ばす。



心の靄がずっとかかったままの精神状態で女を抱いても、全く気持ちがはれない。




"みちるちゃんは絶対に渡さないよ。誰にもね"



ただ、あの勝ち誇ったような言い方で電話を切られたのが、


椎名にとって何より屈辱的だったのだ。






「ねー、何か苛々してる?」


椎名の背後からぎゅっと裸体で抱きついて来た女はクスクス笑いながら、椎名の顔を覗き込んだ。




「…別に」

「またまた〜。和くんってすぐ顔に出るの私知ってるんだからね〜」



煙草の煙を吐きながら、

ぶっきらぼうに呟いた椎名にふふと笑みを浮かべながら頬を指先で突く女。