神楽先生には敵わない



「ズルイ....!教えて下さいよ!」




何だか手のひらの上で転がされてるような気がしてついついやっけになってしまう。



そんな私を見た先生は、しょうがないなぁ~と頭をポリポリかいたあと、おもむろにーーーー。






パッと赤から緑に変わる信号機。


信号待ちしていた人間が一斉に横断歩道を歩き出す中、

私と先生だけはその場に突っ立ったまま。





「....」





自分の目の前に先生の顔がすぐ近くにあって、

口端に一瞬感じた生暖かくて柔らかい感触。



思わず呆然としている私に先生が、

ご馳走様。と私の顔を覗き込んでイヒヒと笑い歩き出した。





ーーえ?

もしかして....。



先生の歩く後ろ姿をただ眺めたまま、
つい数秒前の言動を脳みそフル回転して思い出す。



あまりにも一瞬過ぎて瞬きすら忘れてしまった程だ。