この前はきっと私のことを思って名言を避けたけど、
それが逆に私を苦しめた。
忘れるにも忘れられない、先生の思いが結局ループになったままで抜け出せなかったから。
「迷惑…、か。そうだ、迷惑なんだよ。そういう個人的な感情で仕事に向き合ってもらわれたら」
その時、先生は大きくため息をついて、
空になったカップを目の前のテーブルにそっと置いた。
「こっちはただでさえ右も左もわからない新人が担当者で困ってたんだ」
そのまま勢いよく背もたれに寄りかかり呆れるような表情で呟いた。
「…すみません」
先生の本音は想像していた以上に心の傷を大きく抉ってきて、
俯いたまま涙がじんわりと浮かんだが、零さぬよう何とか歯を食いしばった。
「出会った時は若い女の子と仕事できてラッキ~って思ったけど」
あははと笑う声も心の中で冷たく響いてきてもう胸が張り裂けそうだ。
今まで見てきた先生の面影がゆっくりと崩れていって、
楽しかった思い出達も鮮やかな色から白黒へと色あせていく。
何も知らないまま、言わないまま先生の横にいたときの時間に戻れるなら…。
「―――って言えばみちるちゃんは納得するのかな?」


