神楽先生には敵わない


「そりゃそうですよ。私なんかとじゃ全然キャリアも違いますし」


少し自虐的に話すと、そういう意味じゃないよ。と先生がフォローしてくれる。



「だって何十年のベテランと会社に入りたての新人じゃ、差は歴然ですもん」

「みちるちゃん」

「だから急に担当代わってほしいって言ったんですよね?右も左も分からない若者にまともな仕事なんか無理だって」



こんな事言いたくてここに来たんじゃないのに、溜まっていた感情が無意識に溢れ出てしまう。


先生の声色が少し低くなった事にも気づかないまま、
私は止められない思いを零してしまう。



「仕事なら頑張って覚えたし、先生の為に沢山色んなことやってきたつもりなのに…、急、過ぎて…」



全く興味無かった漫画の事を一から勉強し直して、
少しでも先生の役にたてたらって思ってた。


そこに恋愛感情が入っていたのは紛れもない事実だ。



好きだから頑張れた。

好きだからどんなに大変で過酷な仕事でもやりきって先生に喜んで貰おうって躍起になった。



「迷惑なら、はっきり言って欲しい…です」



俯きながらカップをギュッと両手で強く握る私を、

先生は胸を強く締め付けられるような苦しい表情で見つめていた。