コーヒーを一口飲んだ先生の言葉に私は続ける。
「たった数ヶ月前に事なのに、ずっと昔の出来事にように思えてきます。一緒に仕事をしていたことが」
目に浮かぶ光景を頭の中で思い出しながら話すと、
隣から茶々が入ってきた。
「しょっちゅう来ては、アシさん達と遊んでたもんね」
「遊んでないです。仕事です」
「またまた~。みんなで僕の愚痴散々言ってたくせに」
「溜まりに溜まった愚痴を聞くのも仕事の一環ですから」
当然のように話す私に、みちるちゃん冷たい…と眉毛を下げて寂しそうな表情をしてきても私は全く気を止めない。
そうやっていっつもはぐらかされてきたんだから。
大事な事は特に。
「緒方さんどうですか?敏腕編集者ですからね」
温かいコーヒーを一口飲んだ後、何気なく先生に聞いた。
「実は昔からの知り合いでね。とてもやりやすい。僕の意見も通してくれるし」
確かに新しい方とは同年代だったし、
先生が新人の時から顔見知りだと引き継ぎの時に教えてくれた。
私なんかより何倍も先生の事を知っているかもしれない。
そう考えると心の何処かに隙間風のような冷たい空気が流れ込むような感覚がした。


