「ありがとう、みちるちゃん」
先生はぎゅっと私を強く抱きしめてくれた。
力強い腕の中で私は涙を零した。
誰にだって言いたくない過去はある。
言わなくてもいい過去だって。
ここに連れてきてくれたのは、過去の先生を教えてくれたのは、
きっと私に心を許してくれたからだって思ってる。
そう、信じていいですか、先生。
「…」
抱きしめる腕が解かれると、先生の大きな手が私の両頬を優しく包み込んだ。
そしておもむろに持ち上げらればそのまま先生と視線がぶつかった。
「泣いちゃったのか、ごめんね」
目に溜まる涙を親指でそっと拭ってくれる。
「いえ…すみません、私こそ…、急に」
ゆっくり目を伏せると再び流れ落ちる涙。
先生の優しさと妹さんへの思いが胸をいっぱいになり、
言葉を発するだけで涙が止まらない。
その姿を見た先生は不意に唇を涙跡に近づけそのままキスをしてきた。
いつもなら心臓が飛び跳ねるぐらい落ち着かないはずなのに、
その感触は何処か心地よくて今までの思いが溢れ出して止められない。
「せんせ、私…、先生の事…」
涙ながら呟いた瞬間、唇は遮られ塞がれた。
