神楽先生には敵わない



「先生!先生!」


何だかあの日を境に、
みちるちゃんとの仲がギクシャクしているような気がする。


「ちょっと、聞いてるの?先生」



仕事の話をされてもその事ばかり考えちゃって頭に全然入ってこない。



「あ、駄目だわ。目が死んでる。とっとと原稿仕上げちゃいましょ」




みちるちゃんに合わせる顔がなくて、

必要最低限の会話しかしてないような…。


そんな態度を取っていたら、
明らかに避けている雰囲気を出してるかもしれない。




こうなったのも全て僕のせいだと分かっているんだけど、

悩めば悩むほどどうしたらいいかわからなくなってきていた。





「あ〜、足りない。糖分が。糖分が足りない」




ずっと俯き両手で頭を抱えながら色んな考えを巡らせるも、全くもって解決の糸口が見つからないまま。




「ごめん、ちょっと駅前にあるマドレーヌ食べて…?」



僕は椅子から立ち上がってアシさん達に声をかけるも、何故か目の前にある四つのデスクにはみんながいない。



 
全く仕事に身が入らない僕を尻目に彼女達は自分の仕事をキッチリと終わらせ、


五時に鳴り響く夕方のチャイムに合わせるように自宅へ帰っていたのだった。