誰だろう、なんて思うことはない。
りまちゃんと私を呼ぶ人は友達のいない私にとって相馬先輩ともう一人。
ここにいるのは、相崎くんしかいない。
でも………
「また何かあるの?」
ここに来てからほんと相崎くんに絡まれ過ぎてると思うんだよね。
「うん、最後だしちょっと二人で話したいことがあるんだ。」
「二人で………?」
「そ。だからマネージャーさん?りまちゃん借りるね♪」
え、私OKしたつもり無いんだけど……。
「………理由も無しに二人きりにする必要はない。」
「なんで?……あ、もしかしてりまちゃんのこと………。」
え、なに?私関係しちゃうことなの?
「うるせえ。マネージャーだから芸能界のなかではこいつを見張ってかなきゃなんねーんだよ」
見張るってちょっと、ねぇ。
「えー。じゃあ良いや。理由はね…………ボソッ…………。」
…………?
相崎くんが先輩に耳打ちしてる。
私に聞かれたくない内容ってこと?
「はっ?ふざけてんのか?」
「あれ?マネージャーって芸能人のそんなことまで管理しなきゃいけないんだー。
それってプライバシーの侵害だよね~。」
「……………チッ。」
えとー、耳打ちの内容知らない私には話がつかめないんですけど。
「じゃありまちゃん、行こっか。」
にっこり笑って言う相崎くん。
「えっ、でも……。」
ちらっと先輩をみる。
「大丈夫大丈夫、了承してくれたみたいだから。」
え?舌打ちしてたのに?
戸惑う私の手を引っ張ってスタスタ進む相崎くん。
「おいっ、変なことすんじゃねーぞ。」
先輩が意味不明な忠告をする。
「しないに決まってんじゃん。俺って信用ないなぁ。」
んまー、先輩は相崎くんのこと嫌ってるからね。
スタスタスタスタ……………。
私と相崎くんの足音が響く。
なぜだか先輩が了承してしまったらしいおかげで、誰もいない部屋へ連れてこられる。
「ね、ねえ。どうしてここに来たの?」
「男が女を呼び出してすることなんて1つだよ?」
え……?
呼び出してすること………?
ま、まさか……!!!!!
「り、リンチ!?」
ガクッてなる相崎くん。
え?違うの?
「もー良いや。そういえばりまちゃんって天然だったもんね。」
「それは違うと思うけど……。」
じゃあ何?
「ね、りまちゃんって今芸能人の方?それとも素?」
「へ……?」
なんでそんなこと聞くの?
「ほら、早く。」
「………私、親しい人でも私が素か芸能人モードかわからない人には素を見せないの。」
「でも、昔の俺には素だったよね?」
「あれは、小さいときでしょ?メガネもなくて。」
「…………そっか。」
意外にも落胆してる様子の相崎くん。
別に、私が素じゃなかろうとどうでもよくない?
「俺、さ。初めてあったときからずっとりまちゃんのことが好きなんだよね。」
あっ……なんか今、相崎くんの雰囲気が変わった感じがする。
「いや、それはまあ私もどちらかと言えば好きだけど。」
改まってわざわざ言うことないよね?
「だっから、そういう意味じゃなくて。」
え?だって好きって相手のことをよく思ってるかってことじゃないの?
「恋愛感情として、異性としてりまちゃん……りまに好意を持ってるの。」
「ふぇっ!?
えっ、じじじゃあ、告白……?ってこと?先輩に耳打ちしてたのは。」
「そう。」
「え、え、こくはく……?」
「ぷっ、りま動揺しすぎ。」
あっ………
「先輩にも同じこと言われたなぁ………。」
そう呟くと相崎くんが悲しそうな顔になった。
って、私なにを呟いてるんだろう。
「本当は、付き合ってって言おうと思ったけど………。
どうせダメって言われるのはわかってるから。でしょ?」
「う、うん……。私そういうのわからないし……。」
「だから、伝えるだけにした。」
そう言って哀しい笑顔を作る相崎くん。
「……………。」
こういうときってどういう反応をしたら良いんだろう。
地味子で生きてきた私にはこんな経験無くてわからない。
「まあ、気が向いたら俺と付き合ってよ。」
「ん………。じゃ、じゃあ私もう行くね。
…………先輩待ってるし。」
「うん。じゃあまたね、……りま。」
気まずくって少し頭を下げてその部屋を出た。
そのあと、相崎くんは呟いてたんだ。
「本当はわからないって理由じゃ、無いよね?」
って、私に聞こえない声で。
