****************放課後スタジオにて*****************************
「こんにちはー。」
現場に入って挨拶をする芸能人矢城りま。
………なに客観的に話してんだよって言うとこですね、はい。
「お、りまちゃん今日も頑張れー。」
こんな私なんか……もとい私に優しい声をかけてくれるスタッフさん方。
嬉しいことに皆さんも私の実力を認めてくれてるらしい。
「はい、ありがとうございます♪」
芸能人モード満開の私はにっこり笑顔。
すごいねっ、芸能人モードだとすぐに皆風邪っぽくなるんだよ!!
「……………。」
あら、私の隣から不機嫌オーラ。
発信源はもちろん先輩。
「せーんぱい?どうかされたんですかぁ?」
よくわからん不機嫌モードの先輩にも慣れてきたのでおちょくってみる。
「……………あ?」
こ……こわっ!!
ちょっと、先輩のにらみ怖いんですけど!?
うん、先輩をおちょくるのは間違いだったね。
一応キョドってるといえる私をよそににっこり笑顔なのは芸能人モードのりまちゃん。
素晴らしい笑顔だよっ。今の先輩にはきっとおちょくってるようにしか見えないだろうけど。
「おい、何笑ってんだ?」
ほら、怒り気味に文句言ってきたよ?
「だーって、笑ってるのが芸能人の矢城りまですよね?」
そう、ここまで来たら反撃しちゃおー。
「それが今の俺には逆………。」
はい、不機嫌モードMAXきたー。
「それに、このCM撮影今日で最後なんですよ?
笑顔で終わらしたいじゃないですか♪」
ふっ、さえぎってやったぜ。
「………悪かったな。不機嫌にしてて。」
えっ………
「せ、先輩が不機嫌なのを認めたどころか謝った!?」
「わりぃかよ。
………お前の大事なデビュー作なんだから最後も気持ちよく終わらしたいだろ。」
え……と……。
「ありがとうございます?」
「ぷっ……。また疑問系だな。」
「あ……。そういえば。」
「お前少し変わってきたな。」
あー、羅奈ちゃんにも言われましたね。
「そうですか?芸能人モードなだけだと思いますが。」
「………俺の前では素でいるんじゃなかったのか?」
「だったり違かったり?」
「ふーん。じゃ俺の前では素でいること。
これ命令な。」
「いや、結構心入れかえるの大変なんですが。」
「ならスタジオに入ってる時以外。」
「まぁそれはいつもですけど……。なんでですか?」
「…………別に。」
えー。
「先輩が教えてくれないなら私だって命令とか聞きません。」
ちょっと拗ねとく。
「………へぇ。そんなこと言って良いのか?」
にぃっと笑う先輩。
ヤバい、これは性格変わるパターンじゃ………。
「ううう嘘です、先輩の前では素でいます。」
あの性格は無理。
「俺の前でも、でしょ?りまちゃん。」
はっ!?
先輩じゃない答えが横から………って、
「相崎くん!?」
「そーだよ。やっほー、りまちゃん。」
「や、やっほー。」
「ねえりまちゃん。俺の前でも素でいてくれるよね?」
「え…………。」
それはちょっと……。
私、まだ男の人と素だったらメガネ無しで話せない………。
「おい、やめろ。」
しばらく困ってると助け船が。
「もー、またマネージャーさん?」
「うるせぇな。お前のマネージャーのとこへさっさと行け。」
「はいはーい。」
適当に返事してどっか行く相崎くん。
「あ……先輩、ありがとうございました。」
「なにが。」
うわー、やっぱ相崎くん来たら先輩の不機嫌オーラが……。
「えとー、困り果てたところを助け船くれて?」
「……別に。」
あー、もうっ。せっかくさっき不機嫌でいないとか言ってたのにー!
「先輩?とにかく、今日の撮影NG0目指して頑張るんでもし達成したら褒めてくださいね?」
「………ふっ、わかったよ。」
「じゃあ、行ってきます。」
先輩の笑顔ににっこり返して、撮影に。
グイっ 。
え?
腕を引っ張られたらしい私に何かがドンっとぶつかった。
「せ、先輩?」
「一応心配してやってんだから、俺と二人の時は素でいるんだぞ。」
耳元でそう轟かれる。
「ぶはっ、顔まっか。」
「せ、せせ先輩のせいじゃな……」
「だから、動揺しすぎ。」
「なっ………!!!」
「ほら、始まるぞ。行ってこい。」
もーーーーっ!!!!!
顔を赤くした私は頑張って芸能人モードに切り替え、再び撮影に向かった。
