「お疲れさまです、監督。なにかありましたか?」
「あいや、今日の撮影すごく可愛いし良かったよー。
俊の実力は認めてたけど……。
りまは撮影始めてなんだよね?」
「はい。」
可愛いとか……。
打ち合わせのときに服は変えたけどほぼノーメイクなのに。
演技も嬉しいけど、事務所での反応はひどかったからなぁ。
女の子としてはそっちのが今回は嬉しいかも。
「なのに、相崎くんと張り合ってた。
今日はこれでおわりだけど、次の撮影楽しみにしてるよ。」
「はい!!ありがとうございます!!」
「………それにしても、すごく堂々としてるよね。
演劇とかって事務所の方で習ってたの?」
「…………いえ、独学です。」
「ええ!?絶対どこかでやってるとは思ったのに……。」
それは、あなた方が見てるのは芸能人モードのりまだからね。
「ま、とにかく今日はお疲れー。」
「はい。ありがとうございました!」
頭を下げて退却。
ふーっ、疲れたから早く帰りたいなぁ。
先輩、どこだろう?
「おい、りま!!」
「あ、藤堂先輩!」
ナイスタイミング!
「………何話してたんだ?」
「あっ、監督さんとですか?
演技を誉めてくれました。」
「違う。相崎俊と。」
「へ?」
「だから、相崎俊と何話してたんだ?」
え、なんで相崎くん?
監督ならわかるけど……。
「相崎くんも私の演技を認めてくれたようでしたけど……。」
本当に嬉しい。存在を認めてもらえるのが。
「………そうか。他に、何も言ってなかったか?」
「他に?んーと、素で赤くなった?みたいなことは言われた気しますけど、それが何か?」
私が演技を引き出せたっていうのも、嬉しいけどこの環境のおかげだろうね!
撮影現場っていう環境。
「…………チッ。」
え?舌打ち?
首をかしげると、
「ああいや、なんでもない。
ほら、もう挨拶して帰るぞ。」
「はーい……。」
なんだか上手くはぐらかされた気分。
その後、私と先輩は関係者の皆さんに挨拶をしてスタジオを出た。
