「よーい、カーーーーーっ!!」
その監督の声にまた恋する女の子になる私。
今度スタジオに設置されてるのはカフェのようなところ。
私と相崎くんの思いでの場所で、待ち合わせ場所という設定。
少しドキドキしながらドアを開ける。
少し先にいるのは、大好きな人。
………携帯で、何をやってるんだろう?
私より携帯優先なんだ。
ちょっと拗ねながら彼の携帯を覗きこむ。
……………え?
携帯の画面には、レストランなどの情報がずらーっと並んでた。
もしかして……、私と行く店調べててくれたんだ。
口元に一気に笑みが広がったとき彼が私に気づいたみたい。
はっとした表情。
「うわっ、おいりま何やってんだ?」
あれ、なんか今の言い方先輩に似てる……。
っじゃない!!!
何考えてんの?今演技中なのに。
私は笑顔を満面に広げ、彼に抱きつく。
嬉しくてたまらない気持ちを表せるように。
「お、おい…。」
あ、顔赤い。
照れてるのとか、ちょっと可愛いかも。
彼の頭をくしゃくしゃする。
「……とにかく行くか。」
ドアを指差しそういう彼。
「はい、カーーーっ!!!!」
そこで演技が止まる。
頭の中でぷつって音がしたと思うと私に戻るんだ。
でも、またりまにならないとね。
「りまちゃんお疲れー。」
そう声をかけてきたのは相崎くん。
「相崎くんこそ。やっぱり役者ってすごいね。
表情とかすっごいリアル。」
「そお?俺はりまちゃんの演技に驚いたよ?
あんな泣き虫な女の子にこんな演技力があったんだって。」
「えぇ!!って、泣き虫は今の私に禁句なの!!
私演技で顔赤くするとかできるかわかんないし。」
ん?なに?
ちょっと黙りこんでる。
「……あれは、俺の演技じゃないから。」
「え?」
「素でりまが可愛いから赤くなったの!!つまりりまに演技を引き出されたってこと!!」
「………え。」
それは、つまり私の演技で相崎くんが素で演じる形になったってことなんだよね?
それってなんか……ちょっと気持ち良いかも。
あっ、でもベテランの役者が私に引き出されることなんてないよね。
じゃあ私が可愛いから赤くなったのかな?
…………はい、調子に乗りました。
「おーい、りま。ちょっと良いか?」
あれ、監督に呼ばれた。
なんだろう?
ってか相崎くんどうしよう?
そう思ってちらっと見ると、
「良いよ、行ってきて。」
だそう。
んじゃ、お言葉に甘えて。
「じゃーまたね、相崎くん。
今日楽しかったよ!」
それだけ言って監督のもとへ走る。
「あれは、わざとやってるのかなー?
………ほんと、破壊力抜群。」
って、相崎くんが顔を赤くしながら呟いたことは私の耳に届かなかった。
