****************オフィス内にて*******************************
コツコツコツ……
芸能人モードになった私は堂々と歩いてく。
先輩と社長さんのいるところまでの道を。
「失礼します。」
明るい声と笑顔と共にペコリとおじぎする。
すると、私の変化に社長さんが息を飲んだのがわかった。
先輩は俺はわかってたぞ、とでもいうようににんまりと笑っている。
そんな先輩を一瞥してから、社長さんに声をかける。
「………社長さん?どうしたんですか?」
「あ……いや、なんでもないよ。
それより、眼鏡は外せそうかな?」
「……眼鏡?あ、これですね!!
ごめんなさい、こんなの……。」
そういいつつ、スッと眼鏡を外す。
きっと、その行動にためらいは感じられなかったことだろう。
………中にいる私はりまの行動にかなりキョドってたけど。
けど、芸能人りまに変わったのは正解かもしれない。
メガネの無いことに怯んでる私もいるけど、りまはなんも感じていないから。
なのに………
眼鏡を外したとたん、社長さんとたまたま横を通りかかった人まで絶句してしまった。
ど、どうしよう……。
これって、あまりにも地顔がブス過ぎて芸能界いれなくなるパターン?
変わるって決意したのに……。
最後の望みをたくして泣きそうになりつつ(たぶん既に涙目)社長さんの横にいる先輩を見上げたが、
「ちょっ……おい、こっち見んな!!」
とまで言われてしまった。
……結局、私に変わることなんて出来ないのかな。
せっかく役作りしたりままで、どっかに飛んでってしまったようだ。
そのせいでメガネの無い状態でいることにすら恐怖心を抱く。
でも、当たり前だよね。
可愛いわけでもないのに(ブスって認めるのはちょっと悲しすぎる)演技でさえ、今みたいに崩れちゃうんだから。
はあ~あぁ……やっぱりダメなのか~………。
なんか、泣きたくなってきちゃった。泣いたってしょうがないのに。
……あっ、ヤバイ。涙が……
そう思った瞬間、
「り、りまちゃんだよね?」
社長さんに声をかけられた。
「そうですけど……。」
私は俯きながら答える。
社長さんはその答えにまた衝撃を受けてるけど、私は帰りたいって気持ちでいっぱい。
眼鏡だってつけてないし、このままでいたら本当に倒れそう。
あれ?でもなんで社長さんは、わかりきったことを私に聞いたんだろう。
衝撃を受ける社長さんに、藤堂先輩は
「だから言っただろ?」
と、笑いながら社長さんに小声で言っていた。
小声でいうなら聞こえないようにいってほしい。
そういえば、始めて私の素顔を見たときの先輩も絶句してたっけ。
別に言わなくても顔が整ってないことくらいわかってるのに。
「りまちゃん、一応聞くけどスッピンだよね?」
いや、一応もなにもメイクの技術なんてもってない、
「はい………。」
メガネの無い私が顔をあげれるわけもなく、無礼を承知で俯いたまま答える。
「………そっか。
じゃあ、うちのスタッフに任せるから一回ヘアメイクも兼ねて化粧してもらおう。」
「………へ?」
つい顔をあげかけたが、結局あげられないまま社長さんの話を聞く。
というかつまり……メイクでカバーできるだろうってことだよね。
うわぁ~、良かった…………のかな?
「おい、藤峰!!」
社長さんが藤峰さんというかたを呼んだ。
うわぁ………オシャレ…ってか綺麗な人!!
コツコツ歩いてきた藤峰さんを見て勝手に第一印象を決めた私はぼーっと藤峰さんをみる。
ついメガネをつけてないことを忘れて。
「あら、この子が新しく入る矢城さんの妹?」
「そうだ。」
社長さんが答える。
お姉ちゃんのこと、皆知ってるのかなぁ……。
「へー、可愛いじゃない。この子をメイクすれば良いのよね?」
「ああ。ヘアメイクも兼ねてな。」
「はーい、じゃあ行きましょうか。名前は?」
声をかけられて、とたんに眼鏡がないことに気づく。
慌てて顔を下げ、
「矢城、りまです……。」
「おっけー、りまちゃん。これからメイクするとこに行くから、ついてきてね。」
「はい。」
やっぱり美容関係の人なのかな?
そう思いつつ、着いてこうと腰をあげる。
そのとき、先輩が
「りま、終わったら矢城りまになって戻ってこいよ。」
と言った。
先輩は、私の役が抜けたことに気づいてくれてたんだ。
きっと、先輩の言った矢城りまは芸能人モードのことだろう。
「………っはい!」
先輩に返事をして、藤峰さんについていった。
