それから社員の人の目を気にしつつ外へ出た私。
まあ皆忙しいわけだし、じろじろ見られたわけじゃないけど気になっちゃうんだよね。
それで、会議室は………っと。
てか、会議室についての説明少なすぎじゃない?
向かいのすぐ右って会議室3つくらいならんでるんですけど!
運の良いことに、今使われてない会議室は1つだったからどれかわかったけど……。
私が極度のバカだったりしたら絶対部屋間違えてたよ!?
そう思いつつ会議室のドアを開ける。
ここは先輩の言った通り小さくて、重要なこととか話すのかなぁって思った。
「ふうっ………。」
近くにあったイスに座り、一息ついた。
………さて、どうやって演じますか。
もう一度先輩から渡された紙(さっきこれだけ持ってきた)をよく見て考える。
明るい・元気・笑顔………。
「ふ~~っ………。」
ついまた息をついてしまう。
だってこれ…………設定少なすぎっ。てか笑顔以外抽象的すぎ!!
どうせ、この設定以外はできるだけ私らしくいられるようにみたいな感じなんだろうけどさ!?
この真逆な設定の限り私とはかけ離れてるよね?
…………ん?
ちょっと待って、今の……。
ん~~、あれ?なんか引っ掛かったんだけどなぁ………。
あああああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!!
そうだ!!わかった!!!
私と真逆な部分があるけど、私らしいってことはもしかして………
いや、もしかしなくてもその通りに演じれば良いだけってことだよね!?
つまり………、私は明るくなければ笑顔も無いけど芸能人になる方にはあるわけで。
でも私はっていうか、性格っていうのはそれだけじゃない。だからこそ悩んでたわけじゃん?
ということはだよ?明るい・元気・笑顔以外の設定は、私という設定を矛盾しないように使えば良いんだ。
…………んじゃ家に帰ったら設定を書き加えようかな。
まあ、それはともかく………
目をつぶって意識を集中し、心のなかで唱える。
私は今から芸能人、矢城りま!!
そして深く深呼吸をした私は、ゆっくりと目を開けた。
さっきまでとは全く別の、鋭く、強い光を目に宿らせて。
ゆっくりと、でも堂々とこの小さい会議室を出た。
