「でも、何でこんな設定を作るんですか?」
一応疑問をぶつけてみる。
「ああ?だってお前、今の性格のままじゃ芸能人なんて絶対無理だろ?
眼鏡を外すのだって抵抗あるだろうし……。
けど、役にはいっちまえば大丈夫かもしれないと思ってな。」
あっ………確かにそうかもしれない。
試してみたことは無いけど、役に入ってる時、役の気持ち以外が入っていたことは今までに無いから。
まあ現場で二重に役を演じるのは大変だろうし、長時間あの役で、しかも台本無しに演じるなんて相当難しいけど。
いつ役が崩れるかわからないし、そもそも出来るかわかんないけど…………やってみたい。
なにより、先輩が私のことを考えてこんなことをしてくれたのか思うと嬉しくなった。
「…………ありがとうございます、先輩。」
感謝の言葉を口にすると、先輩は少し照れてるように見えた。
「ばっ……、何いってんだよっ。別にお前のためにやった訳じゃねーし……。」
うん、照れてるね。あんまりもごもご喋らないでほしいかな、聞こえないから。
ちょっと思ったんだけど、先輩って意外と照れ屋なのかな?
………ほんと意外かも。笑
私が先輩をみて笑ってると、耐えきれなくなったのか話を変えてきた。
「もういいっ。それよりりま、お前眼鏡ここで外せるか?」
えっ……と、皆がいるなかでってことだよね……。
先輩だけなら平気なんだけど………。
「やっぱりな。じゃあ10分やるから、それまでに芸能人矢城りまの役作りしてこい。」
先輩は、私の顔色が変わったのに気づいてくれたのかそんなことを言い出した。
「えっ……10分、ですか?」
「ああ。出来ないとはいわせねーぞ?あんだけ啖呵きっといて。
もちろん、ここでやれとは言わない。集中できないだろ?
ここでて向かいのすぐ右に小さいの会議室があるから、そこ言ってこい。」
啖呵……とはさっきの宣言できます発言だろう。
ていうか、これほんとに役作りしてくるの?10分で?
かなり無理があると思うのは私だけ?
ちらっと先輩をみると、ほら、早く行ってこいって目で言ってた。
ほんとになんで私からのアイコンタクトは通じないくせに、先輩からはちゃっかり伝えてくるかなぁ……!!
「……………失礼します。」
ささやかな抵抗として先輩を睨み付けてから会議室に向かった。
