なんで私が芸能人ッ!?








私は一息つく。
先輩は、私の雰囲気が変わったことに気づいたのかなにも言わない。







「家にだって……、帰ってくる日はあるんですよね?
誕生日みたいにイベントの日はどうですか?
その日が忙しくても別の日に祝ってくれますよね。
そういうことは、家族のことを考えてないとできないと思います。」







私が話終えても、先輩は黙っていた。
きっと、図星だったんだろう。







「少し……上から目線みたくなっててごめんなさい。
でも先輩はいい人だから、家族に愛されて育ったんだってわかります。
………こんなこと、14年間くらいしか生きてない私がいうのもおかしい話ではありますけど。
それに、先輩だって、社長さんのことだいぶ好きですよね。
じゃなきゃ、仕事の話で社長じゃなくて親父なんて呼びませんもん。」






ふふっと笑う。
先輩は複雑そう。






「もう良い。事務所につくぞ。」






照れたのかな?





でも、ほんとのことだもん。
私なんか誕生日なんて朝起きたらポンってお札が置かれてるだけ。
笑っちゃうよね。






だから、照れてる先輩がちょっと羨ましいなぁ……。とか思ったり。






あの少し?俺様っぽい先輩が照れたことで薄れたと思った緊張。
しかし、車から降りて事務所に入った瞬間それが倍になって戻ってきた。





きっと、どこの事務所も同じような感じなんだろうけど……
皆忙しそうに働いてるし、有名な芸能人が普通にマネージャーのような人と話してるしで少しオフィス内に緊張感が漂っている。







「あっ。」






そんな雰囲気に圧倒される私とは逆に、藤堂先輩はさも当たり前のようにスタスタと歩き出してしまっていた。
まあ、実際当たり前なんだろうけど。






置いていかれそうになった私は慌てて先輩を追いかける。
すると、先輩が向かったのは今いるオフィスの奥の社長室では無く、その前の対談や交渉とかをするようなとこだとわかった。
そこの周辺は社員用のデスクとか置いてなくて、大きめで楕円の形した机をはさんで、四人掛けソファ二つがある。






そして……、そのソファの片方には貫禄のついた様子で、でも若く見える男の人が座っている。
俗に言うイケメンに入るだろう顔は、先輩に似た切れ長の目や口元ですぐこの人が社長さんであり、先輩のお父さんなんだとわかった。







「そこに座れ。」







藤堂先輩の低い声に従って、社長さんがいないほうのソファの右から二番目のとこに座った。