なんで私が芸能人ッ!?









突進したといってもドアにぶつかるような馬鹿な真似はせず、華麗に家の前へと躍り出た。







あんなに急いどいて……てか急いだおかげで?
家を出た時間は8時25分だったので、いつも通り学校への道を歩く。







なんか……なんとなーくなにか忘れてる気がするのは私の気のせいだよね?
いや、きっと人間誰しもなにかあるときはそう感じてしまうんだよ。
そういうことにしといて、前へ進む。











……………ああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!







か、髪とかしてない!!





いやいつも結ぶだけだし、髪がはねたりしない体質だからとかしてないんだけど……。
さすがに今日はとかそうと思ってたのに……。






まあ、髪が跳ねてないのがせめてもの救いかな。
今日ほどわざわざ自分の髪に感謝したのは初めてだよ。








若干気落ちしつつもたどり着いた学校。
藤堂先輩はまだついてないのかな………?







「…………おい。」






「は、はい!?」






誰かに声をかけられて、反射的に返事をしてしまう私。
そういえば、この人誰?と思い、おそるおそる振り向くと…………






「え!?」






そこにいたのは藤堂先輩だった。
まあ、私に話しかけてくるなんて藤堂先輩くらいしかいないから当たり前っちゃ当たり前なんだけど……。
でも、いきなり後ろから声かけられたら驚くよねぇ。







「えっ!?てなんだよ。えっ!?て。」





「まだ来てると思わなくてびっくりして……。」






「とっくに来てたけど?つーかお前が遅いんだよ。」






「う、うそ……。えっ、さっき3分くらい前だったんですけど……。」






「芸能人になるなら10分前か、せめて5分前行動を心がけろ。
芸能人ってのは人気ももちろん重要だけど、周りのスタッフとか、監督の信頼も必要なんだぞ。」







うっ………。これでも5分前を目指してたのに……。
でも、そうだよね。スタッフの皆さんがいてこそ撮影ができるんだろうし。
私に信頼関係とか築けないよ……。






「おい、なに落ち込んだような顔してんだ?
少なくとも今日ははじめてだし、時間にも間に合ってたんだから文句はねぇよ。
これからはこのことを覚えとけ。」






にっ、と前みたいに笑って、先輩は言った。





そ、そんなに落ち込んでるように見えたのかな……。
そう思いつつ、先輩の笑顔に私は胸がドクンって脈打ったことを感じた。
先輩といると、たまにこういうことがあるんだよね……。なんでだろう……?







「は、はい……。」






なんとなく、複雑な気持ちを抱えてそう答えた。
それから先輩に促され、車に乗せてもらった。