そのようなことで、仕事をしないわけはできない。すると声を掛けてきたメイドが、手伝ってくれるということを言ってきてくれた。どうやらゆっくりと掃除をしている所為で、後が詰まっているようだ。その言葉に申し訳なさそうに頭を下げると、手伝ってもらうことを選択する。


◇◆◇◆◇◆


 その頃ウィルは、トレジャーハンターのギルドで仕事をしていた。と言っても雑用に等しい作業なので、特に苦になることはない。アルンの雑用を手伝っていたことに比べれば、此方の仕事は楽であった。

 山積みにされた本の整理――それが、ウィルが行っている仕事。だが、かなりの量がある。終わるまでには、かなりの時間が掛かるだろう。しかし、途中で逃げ出すわけにはいかない。

 ウィルが整理をしている本は、かなりの年代物。中には歴史的価値がある本が含まれていたり、これら全てトレジャーハンターが探し当てたものである。ウィルはこのような物を見つけてくることは少ないが、読むのは好き。その為、仕事をそっち退けで読み耽っていた。

 だがこのままでは、仕事を終わらすことはできない。手に持っていた本を閉じると、年代別に本を仕舞っていく。ふと、一冊ぐらいは――と、思わず本に手が伸びてしまうが、そのようなことはできない。盗んだことがバレたら、アルンの凄まじいお仕置きが待っている。

 何をしようともアルンの顔が過ぎり、思わず頭を抱え蹲ってしまう。アルンという巨大な存在に、いつまでたっても勝つことができない。権力と財力は半端ではなく、誰に対しても容赦しない。

(はあ、少しは優しく……)

 近くにあったノートとペンを手に取ると、蹲りながら整理していった本の名前を書いていく。何があろうとも仕事を忘れない。そこがウィルの素晴らしいことであるが、最近妙にへこみが激しくなったのも確かだ。

(あれ、これは……)

 名前が書かれたノートを眺めていると、ある物を見つける。それは、ユーダリルに存在する遺跡のことについて、書かれた本だ。

(えーっと、確か……)

 立ち上がり、本棚から目的の本を探していく。すると簡単に、見つかった。他の本より厚さはなかったが、題材にしている事柄に関しては、どの本より詳しく書かれていた。懐かしい――この本に書かれている遺跡は、ウィルがトレジャーハンターとして仕事をはじめた時に、最初に訪れた場所だった。