「きれい……」 桜の大木は自分の持つ花を全て太陽に輝かせ、堂々とそこに立っていた。 昨日までと全然存在感が違う。 誇らしげに立っている、という感じだ。 この横断歩道は車の通りが少ない。 大木が風に揺れる音を聞きながら、蕾は信号が青になるのを待った。 信号が青になり、横断歩道の向こうへと歩き出す。 満開の桜に見惚れながら…。 横断歩道はそう長くない。 はずだった。