「笠原さん!行こー!」 放課後、ホームルームが終わるや否や、隣の席の葵は待ちきれないようにそう言った。 つい昨日まで全く話したこともなかったのに、随分と急な展開である。 「ほら、早くー!」 学生鞄を背負いながら、可愛らしくそう急かす葵は、薫とはまた違った強引さがある。 「ちょっと待っ…」 「ほら、行くよ!」 葵は由佳から鞄を奪うと、教室を出ていく。 由佳はその後を追うように、小走りで追いかけた。 すれ違い様、不機嫌そうな顔をした薫と目が合った。 由佳はばつが悪そうに目をそらした。