帰る事は一哉に言わなかった。

それが後でまずいことになるなって思ってもみなかった。

家族水入らずで楽しんでいるのをわかっていたので、あえて連絡をしなかった。

一哉からのメールもないし、加奈子にもそっちのことをお願いねと返信したので、

連絡はこないと思い携帯を鞄の奥底に入れた。

ちょうどゆっくり帰って考える時間もできそうだし、

何処かで食べるものを買って、ゆっくりしようと思った。

窓の外を見ながらゆっくり時間が過ぎるのを楽しんだ。

こんな時間一人で過ごすなんてもうないだろうな・・・

ふと左の薬指の指輪を見てそっと撫でた。

「会いたいな・・・」ぽつっと言ってしまった。

そうしているうちに駅に到着した。

いつもならお迎えが来ているが、今日は一人。

今晩の食べるものを駅前のデパートで買って、タクシーで家へ向かった・・・。

玄関に着くと見慣れた車が止まっていた。

良樹さんのだった。エントランスで会わないか心配だったけど、会わずに家に帰れた。

玄関を開けて、荷物を起き、ソファーに寝ころんだ。

「何か疲れた・・・」そのまま瞼を閉じた。

いつの間にか眠ってしまっていた・・・。