『俺は将来天羽と結婚する!』

「うん!天羽も零君と結婚する!」



なんて、言い合った丘の上。


ここで俺は天羽と初めて一緒に祭りに来た。
それに、一緒に花火も見た。


今ではあの頃が懐かしい。


俺はその頃泣キ虫だった。

そして、天羽は強虫だった。


だから、いつも天羽に励まされていた。



それが今では逆だ。


けれど、あの時のような会話はしていない。


俺は覚えているが、天羽が覚えているかは分からない。

もしかして忘れているかもしれない。


それもそうだ。
もう10年も前の事だ。


その時天羽が口を開いた。


「零君私とここで交わした約束覚えてる?」

『えっ、』

「覚えてないよね・・・。だってあの日から10年も経ったんだもんね・・・」

『お、覚えてるよ!だって、俺が約束したんだぞ!忘れるわけ・・・ないじゃないか・・・。』

「えっ・・・。でも、今日あの日のように零君楽しそうじゃないから・・・。」

『そ、それは・・・』

「やっぱ零君にも好きな人いるよね。私なんかよりももっと可愛い子沢山いるもんね・・・。」

『何言ってんだよ・・・。そんな事言うなよ・・・。』

「それじゃあどうして零君今日楽しそうじゃないの?」

『うっ・・・。それは・・・それは、俺がまだお前の事が好きだからだよ!』

「えっ、でも零君・・・。私なんかよりも・・・」

『なんで、そんな事言うんだよ!そんなんなら・・・そんなんなら・・・最初からお前を好きにならなきゃ良かった・・・。』

「れ、零、君・・・?」

『どうして、そんな事ばっかり言うんだよ!俺は天羽の事があの日からずっと好きだったのに、どうしてそんな事言うんだよ!』

「そ、それは・・・」

『俺も会話しないで、ずっと歌を聴きてて悪いとは思ってるよ!でも・・・でも、あの頃はまだ良かったけど、天羽と話すのが恥ずかしくなってきたんだよ・・・。でも、恥ずかしいってのは照れてるって言うか・・・。』

「零君・・・。でも、私こそごめんなさい。零君の気持ちに気付いてあげれなくて・・・。なんて話を持ち出せば良いのか考えてて・・・。」


『天羽は誰のこと好きなんだよ?』

「わ、私?!私も零君の事が好き・・・。」

『そんじゃあ、付き合おうよ』

「えっ、でも・・・。」

『でもなんだよ?』

「私なんかより・・・」

『さっきも言っただろ!なんで何回も繰り返すんだよ!もういいよ!天羽なんか最初好きにならなきゃ良かったよ!』

「あっ、待って!零、君・・・」



なんで、なんで天羽は何回も繰り返すんだよ。
俺は天羽のこと好きって伝えたのに。

天羽だって、俺のこと好きって言ったくせに。

・・・・・・。

やっぱり俺らは。いや、俺はまだ幼い。

あの頃と全然変わってないじゃないか。

変わったとすれば、背、声、体重くらいだろ。

それに、泣キ虫だって・・・
克服できたのに・・・。