夜明けと共に起床した亜鬼は
包帯を巻くのに苦労していた。

「なんでこんなに難しいんだっ!?」

《主!私がやりましょう!》

「いや…俺がやる…」

服は手錠が邪魔で着替えられないし、
取り敢えず包帯さえ巻ければ、
ローザを発つ事は出来た。

「よし!やっと巻けた!」

亜鬼はリンリンを起こさない様に
部屋の外へ出ると、亜鬼は
人目につかないように、
教会の出口へ向かった。

「おい!そこの少年。
少し待て!話がある。」

後ろから声を掛けられ振り向くと、
厳つい顔をした男が立っていた。

「私はアレイスト。大司教の一人だ。」

その時亜鬼の目には、
一瞬アレイストと父親が被って見えた。
どこか懐かしい雰囲気を纏うアレイストに亜鬼は目を潤ませた。

「おっおい!泣くなっ!」

「泣かない!絶対泣かないっ!
俺は強くなるんだ…!」

包帯が濡れて行く。
せっかく綺麗に巻けたのにこれじゃあ
また解かなくてはいけないだろう。
するとアレイストは黙って
亜鬼を抱きしめた。

「話がある。帝国軍の話だ。」

「!」

「聞いてくれるか?」

「聞く。」

亜鬼はアレイストについて行き、
部屋に通されるとソファーに座った。
アレイストもソファーに座り、
亜鬼に温かい飲み物を出した。

「昨日、君達が休んでる間に、
帝国軍の参謀長官であるシラヌイって
人が来たんだ。シラヌイは君を帝国軍に
渡して欲しいと言ってきた。」

亜鬼は「行く。仇を取る!
父さんの…里の…仇…」と目を伏せた。
するとアレイストは首を振って、
「君を行かせてしまうと
君のお父様である、
鬼王様との約束が果たせない。」

亜鬼はそれを聞いた瞬間立ち上がり、
「父さんと何を話した!!!」と
破妖刀をアレイストの首に当てた。