「どうぞ?」風流がそう言っても美香が黙っていたので、彼女は再びこう言った。「私がこの姿では流石に怖いですか?それとも、気持ち悪いですか?」
 「えっと・・・その・・・」
 「良いのですよ、気を使わなくても。人にさげすまれながらも、人の中に生きてきた。解っているんです。人が私をどんな目でみていたかなど・・・・・・解っていたつもりだったんです。けれど、人間の中に居るのは楽しかった。家事手伝いとしてではなく、対等の立場と認められた時が一番嬉しかった。旦那様が私を認めてくれた時が、私は一番嬉しかった・・・私達ブラウニーは、報酬をもらう事を好みません。特に、私達がボロボロの服を着ているからといって新しい服を与えたりすると、私達は捨て台詞をはいてその家には二度と戻りません。キリストの洗礼の言葉や聖水も嫌いですので、それをかけられても気分を害します。私達が気分を害すると、堕落しボガートという、まったく別の妖精になります・・・・・けれど、旦那様は違った。私に立派な服をくださった。『報酬ではない。それは、お前を家族と認めた証拠だ。』そう言ってくださった。嬉しかった。鼻が無く鼻腔だけがあり、茶色い毛が体中に生えている私を・・こんなにも醜い私を、旦那様は【家族】と言ってくれた・・・・・・その夜だったんですよ、旦那様のお嬢様と奥様がバンパイアに襲われたのは・・・・・・村の者は私を責めました。『堕落してボガードになっていたのだ!奴がバンパイアを呼んだんだ!奴が!復讐のために!』村人全員がバンパイアになって、それを焼くまで、ずっと言われつづけましたよ・・・私が犯人だと・・・・・旦那様を・・・村人を殺したと。」
 そう言った風流の目から一筋の涙がこぼれおちた。それは、醜い姿とは対照的な、美しい涙だった。