明は、この戦いに参加した戦士と酒を酌み交わしながら、力比べをしていた。いくら飲んでも酔わないこの世界の酒が、明は好きだった。久しぶりに大声で笑う。涙が出るくらい思いっきり笑う。今までの長かった旅が、やっと終ったのだと感じられた。今までに感じた事の無い、すっきりとした開放感があった。ふと、明は思った。こっちに来てから、いったい何日が経ったのだろうか。親や兄弟は、心配しているだろう。友や、先生も、心配しているだろう。だが、今すぐに帰ろうという気にはなれなかった。まだまだ、この異界の住人と、過ごしていたいからである。この異界の不思議な地で、アルコールの入っていない酔わない酒を飲みながら。

 デントは、目を瞑って考えていた。オークの事について。ディゴリスの事について。どうして、自分はディゴリスが偽者である事に気が付かなかったのか。どうして、自分はディゴリスのオークがいなくなるのを見なければならなかったのか。どうして・・・!悔しさのあまり握った拳から、ぽたりぽたりと血がにじむ。それを見て彼は苦笑いした。終った事を悔やむなど、単純なオークが考える事ではない。そう思って、彼は服の裾でその血をぬぐった。何とも面妖な色が服に染み込んでいく。今日は飲もう。決して酔いが回ることは無いのだが、それでも飲みたかった。嫌な事を全て忘れるために、余計な事を考えないために、飲もう。世界が回るまで。