数秒の静寂の後、倒れたのは姉のほうだった。力は、六対四で姉の方が勝っているにも関わらず。
 「姉さん・・・どうして・・・どうして避けなかったんだ!何で・・・どうして、自分から刺さってくるなんて馬鹿な事を!」
 弟がそう叫ぶと、姉の顔から黒き刻印とデーモンキングの朱色のダイアが消えていった。元の、あの清く美しかった姉の姿になっていった。
 「ごめんなさい・・・こうするしか、貴方を傷つけないためにはこうするしかなかったの・・・・何もしてあげられなかったのに、これじゃ格好悪いわね。」
 「姉さん・・・そんな事言わないでくれ!どこにも逝かないでくれ・・・・頼むよ。」
 「悪い姉ね、私・・・・・ラーグウェイ。先に、逝きますね。」
 そう言うと、姉は崩れ落ちた。そして、エルフとして育った森へと飛んでいった。その光は、エルフの母なる老木に吸い込まれた。新しい命となって蘇るために。灰ではなく光となった姉を見て、ラーグウェイは涙をこぼした。ラーグウェイは光になった姉の残光を抱きしめて泣いた。泣いて、泣いて、もう涙が出ないと言うくらい大声で泣いた。姉が去った時よりも、ディアッカが死んだ時よりも、何よりも辛い悲しみが彼を包み込んでいた。