「ノース・・・?!いったいどうしたと言うんだ!」
 ラーグウェイがそう言うと、北斗は笑いをこらえながらこう言った。
 「二人を逃がして僕が犠牲になる。きっと、二人は僕を助けに来てくれるから。まあ、二人が本当に命を預けられる人間だったらって言う話だけどさ。」
 北斗がそう言うと、皆は笑みを浮かべてうなずいた。すると、ギーッという音とともに扉が開いた。血生臭い臭いがする。一歩進むと何か固いものに足が当たった。それを見ると、美咲は口をふさいで後ろによろけた。そこには、食い散らかされた女の死体が転がっていた。それも、若い女性の物ばかりが。闇の中から荒い息遣いが聞こえる。マンティコアである。彼は美咲を見据えるとこう呟いた。
 「人・・・それも女・・・若い女・・・欲しい・・・美味そうだ・・・喰わせろ・・・喰わせろおぉ!」
 マンティコアはそう言うと、赤みがかった毛深いライオンの胴体に、顔が人間という世にも恐ろしい姿で美咲のもとへと突っ込んできた。その口からは、ダラダラとよだれがこぼれ落ちていた。醜い。美咲はそうは思ったものの体が動かなかった。それは、今までに無いほどの恐怖だった。逃げようとしているのに、その場に足が接着剤でくっついたかのようであった。殺られる。そう覚悟してギュッと目を瞑った瞬間、デントはマンティコアを拳で殴り飛ばしていた。