「元々、私は『善』に部類される者の味方だ。今私がお前の目の前に居るのは、お前を試すためだ。お前が自分の真の敵を倒す強さがあるかどうか、それを試したかったのだ。すまなかったな。」ここまで言うと、バシリスクは微笑んだ。そして再びこう続けた。「お前の真の敵は・・・お前の父ギルド・ドランの弟子、バラコスタ・ドラン。お前の叔父でもあったな。」
 「なっ・・・うそだ!バラコスタ叔父さんが・・・リベロを・・・」
 「それに、あの子は死んではいない。生きている。叔父に連れ去られたのだ。」
 バシリスクは言葉をきった。リデロが困惑の表情を浮かべていたからである。そしてその両方の瞳から、大粒の涙をこぼしていた。信じられなかったのだ。自分と妹に優しかった叔父が、妹を連れ去るなど考えられなかったのだ。ノースと共に、城を抜け出す時に手を貸してくれた叔父。優しくて格好良くて、憧れだった叔父。その叔父は、もう居ないのだ。それが、辛くて悔しかった。そして、今まで死んだと思っていた妹が生きている事を知って、とても嬉しく思えた。いつも自分と共に居た妹。ドワーフの民族衣装が、とてもよく似合う妹。その妹が生きているのだ。自慢の妹が。リデロは叔父の元へ行く決心した。立ち上がると大木槌を背負い直し、上へと続く階段へと前進した。まずは、目の前の事から片付けなくてはならない。