この時に、この兄弟の関係を聞いた。ノース・グリード・スターとエネル・グリード・スターは北の王城の先代の長グリード・スターの息子だ。エネルは先代の王と雌馬の、ノースは先代の王が精霊より授けられた子供である。エネルは、千年前の戦いより前に生まれて、父と共に戦乱の世をまだ若い身で戦い抜いた。ノースは、千年前の戦いの後に授けられ、父の跡取りとして育てられた。何故なら、エネルは父の跡を継ぐよりも、大空を飛び回りこの世の均衡を保つ事の方が得意だったからである。
 「パパー。」
 その声と共に、食堂に小さなケンタウロスが姿を現した。半人半馬のその生き物は、父親のヒッポグリフに飛びついた。
 「ケンティス、我弟のノースだ。覚えているか?」
 「大きくなったね、ケンティス。」
 ノースがそう言って微笑むと、幼いケンタウロスは父の後ろに隠れたかと思ったら、扉まで全速力で走っていった。足が速く強靭な肉体を持った種族なので、誰も彼に追いつく事は出来ない。