半世紀ほど前、この山には大人しいトロールが住んでいた。ある日、悪霊・デネィシスはどこからともなく現われた。どこからともなく現われて、山に村を構えた。トロールは山からデネィシスを追いやった。しかし、デネィシスは何度も何度も山に踏み込んだ。人間に上手く化けていたデネィシスだが、ある時トロールにばれたのだ。トロールは彼の妻であった闇の氷魔・フラウを連れ去り、その身体に火をつけた。しかし、その身体は水になって溶け出すどころか、村と山に闇をもたらし、神聖なる山を、魔物のすくう山へと変えた。トロールがフラウをよく見ると、呪いをかけられたただの人間、それも若い娘だったのだ。トロールは、それから何度も何度も嫁を貰うデネィシスを、死なずの悪霊を呪った。しかし、村人はそんな事があったとはつゆ知らず、全てをトロールの呪いと決め付けていた。そう、妻となった娘を連れ去っていくということも。だが一つだけ、村人には納得出来ない事があった。それは、死んだ娘が皆、笑顔だったと言うことである。
「哀しい、話だね。」リデロはそう言うと、妖精のジーニーを呼び出した。「今の話、ノースと美香に伝えて!」
美しい女性の姿をした妖精・ジーニーはリデロに一礼すると、北斗の元に飛んでいった。


