「な…名前聞いてもいいですか?」

「駄目って言ったらどうすんの?」


桜の木から目を離さずに、彼は言った。


「えっ、謝ります!」

「はは、下級生みたい。向日 葵。ひまわりって漢字で書いて向日 葵。」


向日葵。ひまわりと書いて向日葵。

私の第一印象はあじさいとかスズランって感じだけどな。

どこか、儚い。


「君は?」

「へっ?」

「名前。」

「あっ、逢坂桜葉です。逢坂はスタンダードな逢坂で、桜の葉…」

「いい名前だね」


そう言ってやっと私の方を向いた。

あまり思いっきり笑わない。

何でそんな寂しそうに笑うんですか?