天空の暗闇から源氏と柏木が現れます。

「なんちゅうやっちゃ薫は?いらいらする」
「まま、そこがまた奴のいいところで」
「結局女を死なせてしもうた。わるいやっちゃ
こういうやつが一番悪い」

柏木は黙って聞いています。

「それに引き換え孫のほうは調子もんの尻軽で
能天気や。自分も周りもそう認めておりゃあそれが
一番幸せかもな。なまじっか真面目ぶると自分も
みんなも傷つく。中途半端が一番いかん薫のように」

どうも地上では匂宮が中の君を京へ呼ぼうとしているようです。
中の君の後見はやはり薫の君ですから親ぶって構わずにはいられません。

「この春は  たれにか見せん  亡き人の
       かたみに摘める  峰の早蕨(さわらび)」

誰もいなくなった宇治の山荘はやはり一日でも早く京へ移られる
べきだと思われます。